Ultimate Justice 第8話 〜始まる時〜

1.Light

EP0044年4月20日 

 暗黒の空を、一筋の光が切り裂き、その光を追うように、小さな光が現れては消えていった。

(光?)

 エリュテーサンは、開放型コロニーのように太陽光を取り込む為にある「河」がなく、宇宙の様子を見る術はない。しかし、クラストはその光が見えたような気がした。戦艦ムンドの修復が終えるまでの間、この2週間に渡って戦いつづけてきた全クルーは、短い休息の時間が与えられていたのであった。そこで、クラストは一人、エリューテサンのショッピング街へと足を運んでいた。
 今日は、休日とあって大勢の人が、ショッピング街を訪れていた。まるで、分厚い壁を隔てた向こうで、殺し合いなどは存在しないかのうように。
 人込みで、クラストはその「光」を感じていた。突然、クラストが立ち止まったので、多くの人はクラストに「邪魔だよ」といった表情で横を通りすぎていた。

(何なんだ?これは・・・たくさんの人の意識?)

 激しい頭痛が、クラストを襲った。次の瞬間、彼は力なくショッピング街の人込みの中で倒れていた。


EP0044年4月23日

「くっ・・・ん?」

 クラストは、何とか身を起こそうとしたが、全く身体の自由がきかなかった。よく見ると自分の両手両足はベルトのようなもので、ベッドに固定されている。辺りを見まわすと、そこは病院のような場所だと言う事が大体推測できた。 
「目が覚めましたか?」

 一人の女性の声がした。その声を発した人物を見ようとしたが、長く気を失っていたせいか、照明の明かりが逆光となり、彼女の顔は見えなかった。

「君は誰だ?」
「私ですか?ただの看護士ですよ。クラスト・ミリング少尉ですよね?」
「ああ。俺、何でこんな所にいるんだ?」
「覚えてないんですか?突然、ショッピング街の真中で倒れたんですよ」
「そうか・・・そうだったな」
「2日間も意識がなかったんです。でも、寝言を言いながら暴れていたので、ベッドに拘束していたんですよ」彼女はそう言いながら、クラストの両手両足にはめられていたベルトを解いた。クラストは礼を言って、立ち上がった。彼が、ストレッチをしていると今度は男性の声がした。

「少尉、大丈夫ですか?」
 デス・ロックスの首領、エスティン・シャアがそこに立っていた。
「シャア将軍が何故ここに?」
 シャアは、微笑を浮かべながらクラストに近付いてきた。
「怒らないでくれ少尉」
「何に対してです?」
「失礼を承知で、君が意識を失っている間、色々調べさせてもらった・・・特に、君のニュータイプ能力をね・・・」
「・・・別にかまいません」
「君は自分の能力の凄さを知らない」
「シャア・アズナブルやアムロ・レイのようになれるかもしれない、そう言いたいのでしょう?」
 シャアが、自分が言わんとしている事を言われて、驚いた表情を見せた。
「もう、メカニック・マンに同じような事を言われましたよ」
「そうか。君は、素晴らしい能力を持っている。戦後、君ならこの愚かな人間という種を、皆ニュータイプへと導けるかもしれない」
「ニュータイプ、ニュータイプって、何がそんなに良いですか!?」

 ニュータイプという言葉と聞くと、必ず親友のキムとミカのことを思いだし、彼等を守る事が出来なかった自分に対する怒りを感じてしまう。それが、シャアに怒鳴ってしまうという形で現れたのであった。すぐ様、自分を取り戻し、謝罪をした。

「すいません」
「私の方こそ、君の気に触る事を言ってしまったようだ」

 シャアは、ロングコートのポケットから、命令を伝達する小さなノートのような情報端末を差し出した。

「これは?」
「君が、ちょうど倒れて意識を失っていた時、URESと外惑星連邦は再び戦闘を始めた。昨日、君たちの戦艦の修理も終え、君の機体も本来の性能を発揮できるようにした。明日、出撃して側面からURESを撃つとその命令書に書いてある。もちろん、協力してくれるな少尉?」
「もちろんです」

 シャアは頷き、その場を去ろうとしたが、またクラストに振り向き真剣な表情でこう言い残した。「君のその能力、戦後必ず人類に必要となる。戦争なんかで命を落すなよ」と。

 クラストは、シャアが残したその言葉の意味が理解できずに、ただ茫然と立ち尽くすしかなかった。


2.Side Attack
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