Ultimate Justice 第9話 〜到達〜

1.movement

EP0044年4月25日 URES第1艦隊 バル級戦艦「バル」 

 偽りの休戦協定が破棄され、外惑星連邦との戦闘が再び始まって、既に一週間が経とうとしていた。第1艦隊の物資を授かる補給艦隊との連絡が、昨日から途絶えたことにより、第1艦隊は一時的にアステロイド・ベルトからの撤退を余儀なくされた。
 URESが、補給艦隊の壊滅を知ったのは、偵察用の無人ポッドから送信された映像からであった。そして、その映像が送られてから2時間後、攻撃を生き延びた補給艦隊の脱出用カプセルが数基回収された。


「シュラビッツ・イコスキー少佐。何が起こったか説明してくれんかね?」

 イコスキーは、緊張のあまり話そうと口を開けるが、肝心な言葉が出ず、口を金魚のようにぱくぱくするばかりであった。
 緊張するのも仕方がなかった。何故なら、URES軍最高司令官であるシール・グリーン将軍が、まさかこんな最前線に出ているとは思いもしなかったからである。

「少佐、楽にして良いぞ。別に君を罰そうという訳ではない。ただ、何が、誰が補給艦隊をあのような状態に追いやったのかを聞きたいだけだ」

 どうだ、簡単だろ?といった表情でグリーン将軍は、イコスキーを見つめた。イコスキーは、からからに渇きった喉を潤すために、前のテーブルの置かれた飲料パックをとった。喉を潤し、一息ついてからイコスキーはやっと喋り出すことが出来た。

「・・・突然、戦艦クラスのビームが艦隊を襲いました。そして、次の瞬間には
巨大なMS・・・頭のないMSが、接近戦をしかけてきました」
「どこのMSか分かるか?」
「いいえ、あのような機体は初めて見ました。外惑星連邦のものではないと思います」
「ほぅ、なぜ少佐はそう思う?」
「あのようなデザインのMSを、外惑星連邦が作るはずがありません」

 グリーン将軍は、眉を潜めながら、手元にある少佐の経歴を映し出している資料に目をやった。そこには、目の前にいる少佐が、URES軍のモビル・スーツ開発研究機関に、1年前まで所属していた事が記されていた。

「では、君はどこのMSだと思う?推測で構わん」
「・・・推測で構わないんですね?」
「ああ」
「私の考えでは、あのMSは太陽系のものではなく・・・」
「太陽系のものではない?」

 グリーン将軍は眉間にしわを寄せ、少佐の目をじっと見つめた。その目には、元研究員としての自信がみなぎっていた。

「はい」
「太陽系のものではないというと・・・アウタースペース、外宇宙か?」
「恐らく、外宇宙の兵器です」
「100年以上も連絡を絶っているのだぞ?いまさら、奴等は何をしようと言うのだ?」

 グリーン将軍は、少しの間独り言をぶつぶつ言った後、真剣な眼差しでイコスキーに、この話は外に一切漏らしてはいけないと釘をさし、彼をその場から解放した。そして、グリーン将軍は尋問をした部屋に一人で残り、ポケットからニ枚の紙を取り出し見つめながら、口元に笑みを浮かべた。

(やっとデス・ロックスが動き出したか・・・)



デス・ロックス アステロイド・コロニー『エリュテーサン』

 エリュテーサンの、最深部に位置する司令部には、シャア、ドマスティー、リナの3人が集まっていた。司令部の中央にある立体映像装置からは、この周辺の全体図の立体映像が浮かび上がり、リアルタイムに外惑星連邦とURESの部隊の動きを、三角形のマークで示していた。

「どうやって、これほどまでに正確に情報を得る事が出来るのです?」

 ミノフスキー粒子が戦闘濃度にまで散布されている場所では、レーダーは無力化されてしまう。最新型のレーダーでも、さすがに司令部に映し出されているような、リアルタイムの情報を得る事は出来ない。しかし、デス・ロックスにはその技術がある。クラスト達が、圧倒的なMSの技術力の差を先日の戦闘で見せられたように、ドマスティーとリナにもそれを見せ付けんばかりであった。

 ドマスティーは、このシャアという男が何を企らんでいるのか、全く読めずにいた。ドマスティーは、自分が放った問いに、シャアが僅かだが笑みを浮かべたのを見逃さなかった。

(自分たちには、逆らえないと見せつけるつもりか?)

「それは、教えられません。いくら、同盟国であっても、軍事機密は・・・」
「私たちに、圧倒的技術力の差を見せつけて、何をなさろうというのです?シャア閣下?」

 シャアの言葉を遮り、ドマスティーの横で沈黙を守り続けていたリナが声を上げた。シャアは、リナが嫌味のつもりで言った「閣下」という言葉が非常に気に入ったらしく、自慢げに話し始めた。

「別に、私たちの技術力を見せびらかしているわけではありませんよ。リナ補佐官」
「では、何の為に?」
「ただ、どれだけ私達が外惑星連邦やURESに優位に立っているかをお見せしたかっただけです」

(同じではないか・・・!)

 ドマスティーは、口には出さず怒りを胸に押し止めた。それは、取り乱して、シャアを殴ったりでもすれば、ティエラ共和国に生き残る術はなく、今という時を生き抜くには、デス・ロックスに頼らざるを得なかったからだ。

「私達デス・ロックスは、ティエラの皆さんと、同盟関係を結んだのですよ?何を心配なさってるんです?・・・まさか、私達が皆さんを裏切るとでも思っているんでしょうか?」

(よく分かってるじゃないか!)

 またも、ドマスティーは心の中で叫んだ。リナが、心の中でどう感じているか、ドマスティーには分からなかったが、リナは微笑を浮かべてシャアと対等に話している。

「そうですね。デス・ロックスと、同盟関係にあるのなら敵なしですね、閣下」
「リナ補佐官の言う通り、私達は無敵です!さぁ、後はどのように彼等を料理するか?問題は、それだけですよ。ドマスティー大統領」

 ドマスティーも、シャアに笑顔で頷いて見せた。シャアが差し出した手をとり、傍から見れば厚い信頼の握手を交わしているようだったが、ドマスティーの心の中は、怒りで満ち溢れていた。

2.invasion
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