Ultimate Justice 第9話 〜到達〜 |
2.invasion EP0044年4月27日 火星圏 M1コロニー 『オリンポス』 前線作戦基地 『こちら、第4艦隊!駄目です、戦線を維持できません!外惑星連邦に突破されます!』 『こちら、第11艦隊。敵MS部隊の攻撃により、UBCS艦2隻沈没、4隻大破、空母2隻中破・・・』 デス・ロックスが、URESの第23補給艦隊を壊滅させた事は、外惑星連邦にとって益となった。URES軍の主力である、第1艦隊は物資が尽き、戦線から退くこととなった。それによって生じた戦線の小さな空白から、洪水のように外惑星連邦軍が侵入し、URES軍はアステロイド・ベルトから追い出される形となった。 「くっ!もういい!オペレーター、良いニュースはないのか?」 マックス・イナダ大統領は、地球圏を離れ火星圏のコロニーにいた。コロニー『オリンポス』は、平和暦時代に入ると、コロニーに元々住んでいた人々を強制的に移住させ、URES軍の基地コロニーへと改造したものであり、火星圏最大のURES軍基地である。 「あっ、はい。第1艦隊に同行されていたシール・グリーン将軍がお戻りです」 「そうか、良いニュースだな」 そうオペレーターと会話していると、その本人が司令部へと入ってきた。イナダは、グリーン将軍が珍しく焦りの表情を浮かべているのを見て、「これは、悪い知らせがありそうだ」と直感した。そして、その勘は当たった。 「何故、外惑星連邦に対して最新鋭の無人機が負けているのかね?将軍?」 「イナダ、その話はここでは言えん」 イナダは、グリーン将軍に対してプライベートでは敬語を使うが、公の場であれば、位の高い自分が敬語を使うのはおかしいとグリーン将軍に指摘されて以来、グリーン将軍には公の場では敬語を使うことはなくなった。反対に、グリーン将軍はイナダに対して、公の場では敬語を使っている。しかし、公の場でグリーン将軍は大統領を名指しにした。 (それほど切羽詰ったものなのか?) イナダは渋々、司令部には似合わない豪華な椅子から重たい腰を上げ、オリンポスに臨時に設置された大統領官邸へと向かった。大統領官邸といっても、臨時なので一軒家に高級家具類と警備があるだけのものであった。 「ここなら盗聴の心配もありません。グリーン将軍」 「イナダ、二つの報告がある」 「二つとも・・・悪いニュースですか?」 グリーン将軍は、無言でその問いに頷いた。 「一つ目は、外惑星連邦だ」 「私も、それが聞きたかったのです。何故、UBCS、ARCSといった新兵器を開発したにも関わらず、URESは戦線を維持できないでいるのです?」 「それは、外惑星連邦がF・テクノロジーを使用しているからだよ」 「F・テクノロジー?」 イナダは、聞いた事があるような、ないような単語に首をかしげる。 「そうだ。4日前、私が同行していた第1艦隊のMS部隊が、外惑星連邦のMSを2機大破させ捕獲した。コクピットを空けてみると、外見も体型も全く同じ人物が、2機に乗っていた」 「・・・偶然ではないのですか?」 「違うな。その次の日も、捕獲したMS3機にも同じパイロットが乗っていた」 その瞬間、イナダはF・テクノロジーという単語の意味を思い出した。 F・テクノロジー(Forbidden Technology)――主に「クローン」、「遺伝子操作」「ナノマシン」の技術を指している。宇宙世紀に入り、何度かクローン技術を人間に使用した例があった。しかし、太陽系連邦が設立されて間もない頃、反連邦勢力が過去のニュータイプと呼ばれたあらゆる人物を、クローン技術で復活させ、太陽系連邦を崩壊させようと計画していたことが発覚した。何名かは、既にクローン技術で誕生させられていたが、まだ生まれたばかりであり、その反連邦勢力の企みは未然に防がれた。今では、その事件を知る者はごく僅かしかいない。 その後、太陽系連邦の圧倒的軍事力による支配が始まり、その中でクローン技術、遺伝子操作技術、ナノマシン技術の人間への適用は禁止され、それに関係する情報は一切封印されたといわれている。 万が一、禁断の技術を使用した者がいれば、本人、家族、親族、関係者まで死刑にされるという法律が成立した。それが、F・テクノロジーの乱用を抑制する事となった。しかし、それは太陽系連邦が圧倒的な支配力を持っていたからこそ成せた技であった。 「クローン人間か・・・」 「恐らく、非常に高いニュータイプ能力を持つ人物を、遺伝子操作で誕生させ、その人物をクローン化させたのだろう」 このクローン人間、遺伝子操作人間を軍が使用するのを、特例として認めようという動きもURESになかったわけではない。しかし、それよりも養育費などが懸からず、よりコストが安い無人技術の開発、採用を決めたのであった。 「20年前、冥王星圏でコロニー建造ラッシュがあったのは知っているな?」 「はい、私がちょうど地球で療養していた時です」 「そうだったな。その冥王星圏コロニーの約半分が、実はクローン人間を養成する場所であるということが、捕虜の尋問によって明らかになった」 「半分?数千万人もの、改造人間がいるというのですか!?」 「その捕虜が事実を語っているとすれば、そういうことになる」 「何ていうことだ!こちらの無人機の数は・・・?」 イナダは、薄っぺらいノートのようなものを取りだし、指でその表面を触った。すると、様々なデータが薄いノートに映し出される。URESの戦力、生産ラインを調べているのだと、グリーン将軍は察した。 「イナダ、それよりも、もう一つの報告を聞け」 「グリーン将軍、何を言っているのですか?これ以上悪い報告があるというのですか?」 グリーン将軍は、再び無言で頷き、ニ枚の紙キレをイナダに手渡した。 「こっ、これは・・・!?」 3.incubation period |
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