Ultimate Justice 第10話 〜分岐点〜

1.feel

EP0044年5月1日 火星圏

(ガンダム・タイプ!?)

 ルーン・リーは、自分の鼓動が異常に早まるのを感じていた。

(ヨセフスの仇を!!)

 ガンダム・タイプのMSから、接触回線用ワイヤーが、ルーン・リーの乗る青いジェスIIIと、その横にいるフィリップスのジェスIIIにも放たれた。

『URES軍のMS2機に告ぐ、下手に動くと撃ち落すわよ』
「忘れもしない!また、お前か!!」

(ヨセフスを殺した女が、目の前にいる!)

 ルーン・リーは、無意識のうちに右のマニュピレ―ターが握るビームマシンガンを、素早くその女が乗っていると思われる機体へ向けた。その早さは、尋常ではなく、誰一人反応できなかった。

「落ちろ!!ヨセフスの仇だ!!」

 確かに、トリガーを引いたはずだった。しかし、ビームマシンガンは何事もなかったように、ただ沈黙している。一瞬遅れて、弾切れを警告する音がコクピットを満たした。

「どうしたって言うんだよ!!一番肝心な時に!」

 思いっきり、ディスプレイを拳で叩きつけた。恋人のヨセフスの仇さえ討つことの出来ない自分に、また不運さを呪った。

 一瞬の静寂の後、ようやくフィリップスが投降の意志を伝え、2機のジェスIIIは武装解除され、3機のガンダムに曳航された。


5月3日 アステロイド・コロニー『エリュテーサン』

 エリュテーサンの司令部では、立体映像(ホログラム)を4人の人物が円になり囲んでいた。立体映像には、数日に渡るURES軍と外惑星連邦軍との戦闘状況、予測進路などが、色鮮やかに多くの記号で空中に浮かんでいた。

「ご存知の通り、先日の戦いで外惑星連邦は火星圏をほぼ制圧したといっても過言ではありません。URES軍は、どのような反撃に転ずるとドマスティー大統領はお考えでしょうか?」

 ドマスティーは、エスティン・シャアの余裕ぶった顔を見る気にもなれず、視線をホログラムに向けた。

「何故、私にお尋ねになるのです?シャア閣下」
「何故?それは、私達が同盟関係にあるからですよ。それに、私は太陽系の内惑星圏には一度も訪れた事はありません。特に、地球圏のことはドマスティー大統領の方が、余程詳しいかと思いますが?」
「そうですか、しかし、あなたは私以上の適任者がいることをお忘れでいらっしゃる。そう、リナ・ジュミリンを」

 ドマスティーは、横に立っていたリナに顔を向けた。リナは、こくりと頷きシャアを見ると、彼は忘れていたという表情をしていた。

「私の考えを述べさせて頂いて、よろしいでしょうか?」
「どうぞ、リナ補佐官」
「URESは、不利な小惑星帯での戦いを避け、戦線を縮小し地球圏での決戦に持ち込もうという考えていると思います」

 その言葉に、ドマスティーは思わずリナを凝視し、「それでは、自らを追い込むのでは?」と口を開いていた。

「一般的に見れば、確かにそうです。ですが、URESを指揮しているのはあのイナダとグリーンです。何か策があると考えた方が良いと思います」
「リナ補佐官、貴重な意見のご提供感謝します」
 
 シャアが向けた視線に、リナは思わず身体を震わせた。それは、シャアの瞳の奥深くに潜む感情――憎しみという言葉が一番似合うだろうか――を垣間見たからであった。その感情を、脳が直接感じてまったのである。そのせいで、顔色が悪くなったのか、ドマスティーとシャアが心配した表情で自分を見ているのに、リナは気が付いた。

「どうかしましたか?リナ補佐官?」

 つい先ほど感じた「憎しみ」が嘘のように、目の前にいるシャアは、穏やかな紳士らしい表情を自分に向けていた。

「すいません、ちょっと眩暈がしたので・・・」
「恐らく、疲れがたまっているのでしょう。今日は、ゆっくり休んだ方が良さそうですね」
「あっ、はい。ありがとうございます」
「では、今日はこの辺で、また明日今後についてお話しましょう」

 シャアは、礼儀良くお辞儀をし司令室を去っていった。その後姿をリナは、茫然と見つめた。

(さっきのは、一体何だったの?まるで、すべての人の憎しみが、あの人に凝縮されているようだった・・・)


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