Ultimate Justice 第11話 〜門〜
1.the gate

EP0044年5月7日 火星圏 外惑星連邦 臨時司令部

「昨日、URESのウィアロンの攻撃により、L8オルロンに駐留中の第4艦隊と第9艦隊は、ほぼ全滅しました。その後、2回に渡って月周辺宙域にいた第8艦隊を再びウィアロンが攻撃。その結果、第8艦隊のほぼ半数が失われました。地球圏に送りこんだ、主戦力が失われたといっても過言ではありません」

 火星圏に存在する、1基のコロニーを外惑星連邦は、前線基地として使用していた。そのコロニー内の市役所の建物に設置された臨時司令部の作戦会議室に、黙々と任務をこなす兵士の声がこだました。

 外惑星連邦大統領ローセルト・ライネル、そして息子であるヨシュアの姿もある。作戦会議室は、重々しい雰囲気に満ちていた。それは、地球圏に侵攻し、L8コロニーを占拠し活気に満ちていた数日前とは全く異なっていた。

 巨大スクリーンに、次々と地球圏から撤退する外惑星連邦艦隊が、三角形のシンボルで表された。その間も、兵士はスクリーンを指しながら、現在の状況をさらに細かく説明する。 

 ヨシュアは、横に座る大統領兼父親である人物を見つめた。一目見ただけでは、いつものように平静を保っているような感じを受ける。しかし、息子である自分だけが、今の父は明らかに心の中で怒りに燃えているのが分かる。いつその怒りが爆発するのか、それが恐かった。怒った時の父は、何をしでかすか分からないというのが、ヨシュアが持つ父の印象であった。

「ご苦労」

 父の横顔を見つめている内に、兵士は説明を終え、大統領に向かい敬礼をし、自分の席へと向かった。大統領の目が、作戦会議室の中心にある長方形のテーブルに座る政府高官と軍人たちに向けられた。軍人たちの中でも、特に今回の地球圏侵攻作戦を指揮した士官に厳しい眼差しを向けた。

「さて、先ほどの説明の通り、我々の地球圏侵攻作戦はURESに阻まれたわけだ。何故、URESがウィアロンを使用してくると想定していなかった?想定しておれば、このような事態には決してならなかったはずだ!」
「大統領、諜報局はURESの幹部が大量破壊兵器であるウィアロンの使用は断固として認めないであろうという情報があったので・・・」
「諜報局に責任転換をする気か!?」

 大統領が席を立ち上がり、今にもその士官に対して飛び掛りそうだった。それを、制すためにヨシュアも同じように立った。これは、まずいとヨシュアが考えた時、思わぬところから救いの手がのばされてきた。それは、緊急事態を知らせる兵士だった。

『大統領、緊急回線で通信してくる艦隊がいます!』
「何、どこの艦隊だ?第33艦隊か?」
『いえ、外惑星連邦のものではありません』
「我が軍のものではないだと?では、どこだ、URESか?」
『それも違います。彼らは、デス・ロックスと名乗っています』

 デス・ロックスという言葉が、その兵士の口から出た時、作戦会議室に沈黙が訪れた。

 外惑星連邦にとって、デス・ロックスは「排除できない厄介者」と認識されていた。外惑星連邦の領土である、アステロイド・ベルトに居座り、EP時代初期には、そこを通る輸送船を襲い物資を盗む海賊行為を行った。そこで、何度か討伐隊を派遣したが、その度に全滅したという記憶が、外惑星連邦の人々の中に残っている。結局、30年前から、そのアステロイド・ベルトの地域を避けて輸送するようになった。何故、今ごろデス・ロックスから通信が?というのが作戦会議室にいる全員の心境だった。

「この部屋へ通信をまわせるか?」
『はい。今すぐに取りかかります』

 巨大スクリーンに、貴族のような格好をした金髪の若い男が立っている様子が映し出された。そして、その後ろには見慣れた二人の姿があった。しかし、その二人よりも、今はデス・ロックスのトップだと思われる金髪の男に、ローセルト・ライネルは興味があった。

『あなたが、ライネル大統領ですね?』
「そうだ。君は?」
『申し遅れました。私はデス・ロックスを治めているエスティン・シャアと申します』
「エスティン・シャア?今シャアが存在する。旧世紀古代の言語を混合した名前かね?おもしろい」
『古代言語にも、ご精通のようですね』
「そんなことは、どうでもいい。シャア殿、今まで散々、我が領土内で暴れておきながら、なぜ今頃になって外惑星連邦に連絡を取りに来たのかね?まさか、投降しにきたとでも言うのかね?」
『ご冗談を。私たち・・・』
「私たち?」

 その言葉を聞き、ライネルは再びシャアの後ろに立っている二人の姿に目を移した。やはりそうだ。ティエラ共和国大統領と、元URES大統領。その二人だということはすぐに理解できた。

「ほぅ、これはこれは・・・お久しぶりです、リナ・ジュミリン元大統領、そしてリュウ・ドマスティー元大統領。ご無事で何よりです」

 ライネルは、スクリーンに向かって一礼した。顔を上げると、ドマスティーの怒りがスクリーン越しに感じられた。

『そうです。現在ティエラ共和国と、我々デス・ロックスは同盟関係にあります。リナ・ジュミリン元大統領も、今はドマスティー大統領の補佐官を務めております』

 にこやかな表情を崩さないシャアに対し、ライネルはこちらのペースに乗せられず、苛立ちを覚えた。

「シャア殿、説明は結構です。はっきりと、あなた方の目的をおっしゃって下さい。投降しに来たわけではないとすると?」
『そうでした。デス・ロックスとティエラ共和国は、URESに対する共同戦線を外惑星連邦と張りたいと考えています』

 作戦会議室にいる人物の全員が、驚きの表情を露にした。だが、ライネルはスクリーンを睨みつけたまま、身動き一つしなかった。

「おもしろい。だが、デス・ロックスはどれだけの戦力があるというのかね?」
『話が分かる方でよかった。私たちの、戦力をお見せしていませんでしたね。今から、データをそちらへ送ります』

 瞬時に、スクリーンにデス・ロックスの保有する軍事力の詳細が表れ、作戦会議室は、また驚嘆することとなる。せいぜい存在しても、1個師団だろうと見積もっていたライネルも、今度は驚きの表情を隠す事は出来なかった。

「なっ・・・。国家並の戦力ではないか?」
『ライネル大統領、どうですか私たちと手を組み、URESを駆逐しようではありませんか?』

(もし、このデータが嘘だった場合は、彼らを排除すればいい。利用できるのなら利用してみるか・・・)

「充分デス・ロックスの力は理解した。喜んで手を組もうではないか。共に、URESを打倒という共通の志を持った友として」


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