Ultimate Justice 第17話 〜星の瞬き〜
2.revolt

 ウィアロンのビームが外れた後、デス・ロックス艦隊は、一気に距離を縮め、同盟軍に対して再び一斉艦砲射撃後、MSを射出しはじめた。迎撃の為に、同盟軍のMSも一斉に艦艇、軌道ステーションから、青い星を背景にし飛び出して行く光景が広がった。


EP0044年6月21日 軌道ステーション『ジュダ』 MSデッキ

 ルーン・リーは、赤いガンダムに乗り込もうとするジョイスに声をかけた。不思議そうに、ジョイスはルーンを見返した。ルーンの中には、彼女に対する殺意や憎しみというものはほとんど消えうせていた。一時は本気でジョイスを殺そうと思った。しかし、その思いを断ち切った今は、単なる友情というよりもさらに強い絆があるように思えた。

「私が言った言葉、忘れるんじゃないわよ」
「ええ、絶対にこの戦争を生き抜く!」
「その言葉、必ず守り抜きなさいよ」
「はい」

 ジョイスは、真直ぐルーンを見て敬礼した。それに答え、敬礼をルーンは返し、自分の機体へと向かった。ルーンの姿が他のMSの影で見えなくなるまで、ジョイスは敬礼をし続けた。そしてジョイスは、自分が乗り込む赤いガンダムを見上げ、祈るような気持ちで小さく呟いた。「生き抜いて見せる」と。


同時刻 軌道ステーション『ジュダ』 総合司令部

 アマルティア・トウジョウは、密談をした部屋から再び総合司令部に戻った。そこで、最初に頭に浮かんだ事は、ローセルト・ライネル、リュウ・ドマスティーといった人物は、どうなるのかという疑問だった。

(彼らは、何も知らない。12時間後に反乱が起こることを・・・)

 そんな事を考えている間にも、次々とMSは宇宙の暗闇へと消えて行く。

(彼らは、一体何の為に死んでいくんだ?)

 次々と、自分の心の中に疑念が浮かび上がる。自分だけが、真実を知っているという罪悪感が襲う。トウジョウは、前にもこんなことがあった事を思い出した。それは、30年以上前のある事件の時だった。

 EP時代最悪の事件といわれた「ニュータイプ・ジェノサイド事件」。トウジョウは、当時その事件の一端を担った月方面第3防衛艦隊所属のMS部隊長だった。現大統領であるマックス・イナダは、その当時は月方面司令官であった。

 月方面司令官であるイナダは、依然からニュータイプの追放を唱えており、それを武力によって行う事を独断で決定した。そして、その最初の目標として、L3コロニー「シャルロット」を攻撃しろと命令を下したのであった。「シャルロット」には、目立った産業もなく、軍需産業もなかった。そこにいたのは、一般市民だけだった。そして、最初の射撃を行うことに決まったのが、不運にもトウジョウのMS部隊だった。

 「撃て」と命令されて、トリガーを引くまでの間は、時間にしてはたった数秒だった。その数秒の間に、トウジョウは、自ら放つメガ粒子の光に焼かれる不運な市民、コロニー壁の穴から真空へと吸い出される市民の様子を想像してしまった。しかし、そんな思いもすぐに消え去り、上官の命令通りトリガーを引いた。それを合図に、僚機もトリガーを引くと、閃光が辺りを照らした。

 コロニーの壁は、ビームに撃ち抜かれ簡単に穴が空き、目の前には想像していた通りの光景が広がった。真空の空へと吸い出される建物の破片、男、女、老人、子供・・・。

 その時、トウジョウは彼らの死が何の為であるのか理解できなかった。だが、若き兵士である以上、上官の命令は絶対であり従うほかなかった。そして、何よりも当時は、イナダが唱えた「ニュータイプ危険論」、「アースノイド主義」に取りつかれていたのだから。

 過去に自分が犯した過ちをトウジョウは、思い返していた。そんなトウジョウに、一人の人物がゆっくりと歩み寄り、声をかけてきた。

「中将、大丈夫ですか?」
「・・・リナ大統領?」

 トウジョウは、心配そうにこちらを見つめるリナ・ジュミリンに驚き、思わず口を滑らせてしまった。慌てるトウジョウに、リナは微笑み言った。

「もう大統領ではありませんわ。今は、補佐官です」
「そ、そうでした。申し訳ございません。私に何か用ですか?」
「いえ、そんなに汗をかいてらっしゃるので、どこか具合が悪いのかと思いましたので」
「えっ?」

 リナに指摘され、初めて自分が汗をかいていることに気付き、慌ててハンカチで顔の汗を拭きとった。トウジョウには、リナと同じ年頃の娘がいた。家でも、よく真剣な考え事をすると、すぐに額に汗をかくと、よく言われていたのを思い出した。

「いえ、大丈夫です。ご心配ありがとうございます」
「そうでしたか。体調にはくれぐれもお気をつけ下さい」
「心に刻んでおきます」

 立ち去ろうとするリナを、一瞬トウジョウは呼び止めようと口を開きかけたが、声を出す事は出来ずに再び口を閉じた。12時間後の陰謀の事、彼女になら話せる。話さなければならない。そう思った。しかし、その思いを留めたのは、ある記憶だった。
 
 ニュータイプ・ジェノサイド事件後、イナダとその事件に関わった関係者は厳しい処罰を受けることとなった。しかし、トウジョウの名は、所属していた艦隊から、他のデータと共に消されていた。

 後に、それがイナダとグリーンによる行為だったことが判明した。彼らは、トウジョウが熱心なアースノイド主義者であると知り、そこで、再び起こるであろうニュータイプとの対決に備え、自分達が表舞台に復帰した時に動きやすいように、トウジョウを軍部の上に属させようとしたのであった。その結果、トウジョウは順調へ出世し、今では中将になり、次期総司令官として期待されていた。

(今の自分があるのは、イナダ大統領やグリーン将軍のおかげだ・・・・)

 心の中の葛藤を何とか鎮めようと、戦闘が始りつつある空間を見つめた。心の中で呟いた。

(いまさら、裏切る事など出来ない・・・)

3.masked battle
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送