Ultimate Justice
第4話〜光〜

2.new type

ティエラ共和国軍 ソル級戦艦「ムンド」 大統領室

 まるで宮殿の一室のような大統領室にクラストは呼ばれ、今まで座ったこともないような豪華なソファに座っていた。呼び出した張本人は、部屋の巨大な窓から暗闇の空を眺めていた。
 ドマスティー大統領は窓から離れ、クラストの前にあるもう一つのソファに腰掛け、真直ぐにクラストを見つめた。

「クラスト・ミリング少尉。まずは、私の部下二人の命を守ってくれたことを感謝する」
「軍人として当然のことをしたまでです。感謝なんて・・・」
「そうだな。代償は大きかった」
「はい。キム・ジョンソン曹長は自分の親友でした」
「そうか。ところで、ミカ・ルケード曹長の様子はどうかな?」
「彼女は・・・キムの恋人でした。自分より、彼女の方がショックは大きいでしょう。ずっと部屋にこもったままです」
「そうか」

沈黙が部屋を覆った。

「どうして、曹長を救えなかったのか?そう自分を責めているのかね?」
 ドマスティー大統領は、クラストの心の内に潜む悩みを言い当てた。クラストは、一瞬だけ驚きの表情を見せるが、すぐに冷静な顔つきに戻った。
「はい。大統領がおっしゃる通りです」
「ニュータイプ能力、それがあったにも関わらず?そう思っているのかね?」
「はい。自分がニュータイプなら、何故キムを救えなかったか、それが疑問です」
 大統領は、ふぅと大袈裟に溜息をついた。
「ニュータイプであっても、所詮は人間だ・・・・・・不完全な、だ。それを間違えてもらっては困る。君が描いていたニュータイプ像がどのようなものか、私には分からないが、ニュータイプは人間が宇宙に適応し、過酷な宇宙環境を生き抜くために身につけた一つの能力と考えて欲しい」
「適応力ですか・・・?」
「そうだ」
「人の意識が分かるのも・・・?」
 大統領は、頷きまた立ち上がって巨大な窓の正面に立った。
「この宇宙。君はどのように感じるかね?」
「・・・・・・広くて、大きくて、自分がどれだけ小さな存在か、そしてどれだけ孤独か、そう感じます」
「結構だ。初めて宇宙に来る人は、皆同じように感じる。特に孤独を感じると、よく人は口にする」
「それが何か?」
「ニュータイプ、それは宇宙に適応するための能力。この広い宇宙を見たまえ。無限の広さ。太陽系だけでも、人間には広大すぎる。数十年前なんて、太陽系内の通信だけでも、タイムラグがどれだけあったか知っているか?」
「はい。パブリック・スクールで習いました」
「人が、この宇宙に住むには地球でつちかってきた能力だけでは対処できなかったのだよ。五感以上の能力が必要となった。人と人とのコミュニケーションの新しい形。それをニュータイプ能力といっても言いのかもしれないな」
「コミュニケーションですか・・・」
「そうだ。人は一人では生きていけないだろう?」
「はい。確かにそうです」
「この宇宙という環境が、人の能力を発達させたのだよ。ある話しでは、太陽系外にある恒星国家。そこでは、戦争が一度も起こっていないとも言われている。それは、彼らが地球という重力から完全に解き放たれからかもしれないな」
「地球から解き放たれる?」
「人はいつでも安定を求め、すぐに怠けてしまうものだ。地球という、人間にとって必要なもの全てを供給してくれる源が、すぐ側にある。その安心感が、私を含め多くの人を、この太陽系に閉じ込めている。私はそう思うがね」

 クラストは、何も言い返す言葉が見つからなかった。自分も、地球で生まれ、育ち、空気や自然が当たり前のように存在し、常に人間にとって最高の環境を整えてくれる地球の重力に、捕らわれているのかもしれないと思った。

「そうそう、君を呼んだのは、こんなニュータイプ論を話すためではなかった。歳をとると、どうも頭が上手く回らなくなる。君は、ティエラ共和国軍に入隊する気はないかね?」
「自分には、もう他に行く場所がありません」
「それは、承諾の返事と受け止めてもいいのだね?」

 クラストはこくりと頷いた。ドマスティー大統領は、クラストに握手を求め、正式にティエラ共和国軍へ入隊したことを宣言した。階級はURES時の少尉を引き継ぐことになった。クラストは、これからどのような戦いに巻き込まれていくのか、知る由もなかった。

 
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