Ultimate Justice
第5話〜撤退〜

2.Colors

 巨大戦艦ムンドから、次々とMSが射出される様子が、ルーン・リーの乗るディスプレイからも確認が出来た。彼女のヘルメットの後頭部からは、一本のコードがコクピットの後ろに設置されている黒い機器と繋がっていた。そのコードは、アークス(能力強化管制システム)と接続していた。彼女の努力により、ついに開発が完了したアークスは、UBCSとも連携が可能となった。ある一定の距離にいるUBCSモビルスーツを、パイロットが思考するだけで遠隔操作することが可能となった。

「行くよ。マオンたち!」
 ルーン・リーは、アークスを起動させ、3機の僚機を自分の意志通りに操り、僚機と共に機体を巨大戦艦へと向かわせた。

 クラストは、赤いガンダムで迎撃に出ていた。URESの新型無人MS「マオン」の性能の良さに戸惑いながらも、1機ずつだが確実に撃破する事に成功していた。
「くっ、一体何機いるんだ?」
 爆光が、赤いガンダムを照らした。
「今ので、7機目!」

 そう言っている最中に、3機の無人MSが攻撃をしかけてくる。クラストは、ガンダムのビームライフルを斉射した。しかし、いとも簡単に回避された。さっきまで戦っていた無人機とは何かが違った。人の存在というのか、意識みたいなものが、かすかだが無人機に宿っているようにクラストは感じた。その感覚の根源を、すぐにクラストは発見した。親友であるキムを殺した青いMSが目の前に現れたからだった。

「また会ったね!」

 忘れるはずもない、女性の声がガンダムのコクピットに響く。クラストは、この濃度のミノフスキー粒子では通信が届くはずもないことには、何の疑問を感じなかった。

「よくも、俺の親友を!」

 ガンダムが、ビームライフルを向けた瞬間、ビームライフルが無人機の放ったビームの熱で溶解していった。クラストは、ビームライフルを投げ捨てると、青い機体にビームサーベルを抜き突進した。しかし、青い機体を守るかのように、3機の無人機が、クラストの行く手をことごとく阻む。そして、主要な遠隔攻撃手段を失ったガンダムに対して、青いジェスIIIは距離を保ちながら次々とビームマシンガンを連射する。ビームシールドで、何とかその猛攻を防ぐ。その隙に、今度は2機の無人機がクラストの後方へとまわった。

(この状況を打開するには、アレを使うしかない)

 クラストは、意識をガンダムの背中に収納されているモノに集中させた。4つ球状の物体が、ガンダムの背中から勢い良く飛び出した。その物体に、一瞬だが無人機は隙を見せた。その球状の物体から、メガ粒子ビームが放たれ、1機の無人機の頭を直撃した。

「やった!?」

 クラストは、歓喜の声を上げた。テストではいつも失敗ばかりして、動かすことさえ困難だったサイコミュ兵器「ファンネル」を使えたのだ。4基の丸いファンネルは、クラストが思う描くように無人機に襲いかかる。ファンネルの複雑な攻撃に、さすがの無人機もついていけなかった。ファンネルが放ったビームはジェネレーターを直撃し、無人機は光の中へと消えていった。

「さすがにやるっ!!」

 ルーン・リーは、サイコミュ兵器の突然の登場に驚いた。何故、今までサイコミュ兵器を使わなかったのか疑問と思ったが、すぐに平静を取り戻した。
 最後に残った僚機も、ファンネルの攻撃によって簡単に破壊されてしまった。

「お前だけは、許さない!」

 クラストは絶叫しながら、ファンネルと共に青い機体に攻撃をしかけた。そのビーム攻撃を、紙一重で青い機体は避けていく。

「こんなの!私は、幾つもの戦闘を生き抜いてきたんだよ!」

 ルーン・リーも、クラストの叫びにつられるのかのように、同じように大声で叫んでいた。リーの機体から、4発の小型UBCSミサイルが発射される。すぐにファンネルが、そのミサイル全てを破壊するが、青い機体は、一番近くにあったファンネルをビームマシンガンで撃ち落した。

 その瞬間、クラストの頭に激痛が走る。それは、パイロットと密接に関わるサイコミュ兵器であるファンネルが破壊された事によって生じたものだった。
 一瞬、ガンダムがひるんだのをリーは見逃さなかった。すぐさま、ビームマシンガンを斉射する。光条がガンダムに吸いこまれていくかのように見えた刹那、突然ガンダムの前に影が割って入った。

(直撃!?)

 クラストは、自分が作った一瞬の隙を悔やんだ。目を閉じていたが、いつになっても痛みは訪れない。ゆっくりと目を開けると、1機の大破したMSの姿があった。それは見慣れたMSだった。キムの恋人、ミカ・ルケードの機体。

「ミカ!?」

 クラストは、無我夢中で目の前にある機体に呼びかけた。そうしている間にも、青い機体は容赦ない攻撃をしかけてくる。回避運動を取りながらも、クラストはミカの名前を呼び続けた。

(何で、俺の周りから大切な人が次々といなくなるんだ!)

 そう思いながらも、コクピット内のディスプレイには次々と機体の被弾状況が表示される。確実に、ガンダムは青い機体によって戦闘能力を削がれていっていた。

(キムも、ミカも守れなかった・・・)

 そこへ、ティエラ共和国軍の味方部隊が支援にきた。しかし、青い機体は易々とビーム攻撃を避けていた。

「6対1、ちょっと不利ね」

 ルーン・リーは、自分の機体情報も見ながらそう判断した。最新鋭MSと言えども、サイコミュ兵器からのビーム攻撃を回避し続け、機体の至る所で消耗が激しかった。彼女は、残りのミサイルを放ち、さっさとその場から後退した。

「ミリング少尉!大丈夫ですか?」

 支援に来てくれた味方機の、隊長機らしきMSがガンダムに接触通信をしてきた。

「俺は大丈夫です。でも・・・」

 相手も、クラストが何を言わんとしているのかが分かった。ガンダムの前には、大破してただ宇宙に漂流しているMSがあった。

「少尉、しっかりしてください。第一波は何とか防ぐ事が出来ましたが・・・第二波を防ぐ戦力は、もうムンドには残されていません。すぐに帰艦してください」
「分かった」

 そう返答した時には、URESの第二波がすぐ近くまで接近していた。クラストが、何とかミカの遺体だけでも収容しに、白い機体へ行こうとすると、一つ目のMS「ニノ」に行く手を遮られた。

「ダメです少尉。もう時間がありません」

 クラストは、断腸の思いでその宙域から離脱した。数分後に、その宙域はURESの第二波攻撃隊で埋め尽くされていた。


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