Ultimate Justice 第7話 〜赤い機体〜

2.only way

EP0044年4月15日 アステロイド・ベルト 

 直径数ミリのスペース・デブリといわれる宇宙のちりのようなものから、直径数十キロの隕石が、アステロイド・ベルトでは至る所に存在している。ミノフスキー粒子が散布されていない時でさえ、最新型のレーダーを持ってしても、艦船、MSと隕石との区別をすることは困難を極めた。しかし、デス・ロックスはこのアステロイド・ベルトにあたかも道があるように、1日足らずでデス・ロックスの本拠地に辿りついた。

 デス・ロックスの本拠地は、直径14キロの小惑星であった。ティエラのクルー全員が、その本拠地を見たとき何かの形に似ていることに気が付いた。そう、デス・ロックスのMSや艦船、ノーマルスーツに描かれていたマークと同じ形だということに。

「ここが、私達デス・ロックスの本拠地『エリュテーサン』です。4000万人が暮らしています」
「そんなにも、人がおられるんですか?」

 ムンドのブリッジの仮想窓から、翼を広げたような角張った小惑星を見ながら、リナがシャアに尋ねた。

「そうです。エイレーネ恒星国家の者がほとんどです」
「何故、エイレーネからわざわざ太陽系に?」
 その問いに、シャアが少し言葉を詰まらせたのを、リナは見逃さなかった。
「私達は、エイレーネの政府から、太陽系を監視する役割を与えられているのです。人類発祥の地である地球を滅ぼそうとする、そのような独裁者などを、食い止めるのが私達の任務です。いわゆる、太陽系内の勢力均衡をするためのバランサーとして、このアステロイド・ベルトに潜伏しているのです。いざと言う時のためですよ」
「そうですか」

 リナは何か腑におちなかった。しかし、今は議論するよりもデス・ロックスの真の目的と、本当に信頼できる仲間になりうるのかどうかを見極める時だった。

「すぐに、この戦艦ムンドはドックへ入れて、修理させましょう。私達が壊したのですからね」

 そう言い残すと、シャアはブリッジを去っていった。そして、武装した部下も全員彼を追った。黒いノーマルスーツがいなくなったのを確認すると、ドマスティーがリナの横に立った。

「彼等は、信頼できそうかね?」
「はい、今のところは・・・でも、何か裏がありそうです」
「そうだろうな・・・あのシャアという男の真意が私には見えない」
「・・・今は、彼のいう事を聞くのが無難だと私は思います」
「補佐官の言う通りだろう。いつでも、逃げれる準備はしておかないといけないな・・・」
 黒いノーマルスーツの男が、突然ブリッジに戻ってきた。その男は、ドマスティーとリナの前に立つと、敬礼した。

「大統領、補佐官、シャア将軍がお呼びです。ご同行願います」
「分かった、こちらも一人ボディーガードを付けて言いかね?」
「どうぞ、ご自由に」


デス・ロックス アステロイド・コロニー 『エリュテーサン』


 戦艦ムンドを収容出来る巨大ドックがあることに、まず多くのクルーが驚いた。クルーは全員、艦を下ろされ臨時居住区へと移された。ドマスティーとリナ、そして急遽ボディーガードとして呼ばれたクラストは、豪華な一室へと案内された。
 その部屋の真中に立っていたのは、先ほどの黒いノーマルスーツを着ていた時とは別人であった。白と青を基調とし、色鮮やかな旧世紀の中世のような貴族の服を身にまとる、エスティン・シャアが堂々と立っていた。先ほどは、ノーマルスーツのヘルメットで隠れていた金色の髪が、天井のシャンデリアによってさらに明るく輝いていた。

「ようこそ、エリュテーサンへ。どうぞ、お座りください」

 シャアは、護衛の部下全員に引くようにと目配せをした。それに、一瞬護衛は戸惑うが、すぐに部屋から退出した。

「これで、少しは信用していただけましたかな?ドマスティー大統領」
「少しは・・・早速ですが、シャア将軍。何故、私たちと手を組もうと考えなさったのですか?」
「先ほどお話したように、私たちはエイレーネから、太陽系のバランサーとしての役目を与えられています。今回、URESと外惑星連邦の全面戦争は、この太陽系を荒廃させ、下手をすれば人類が滅亡するかもしれないと判断し、バランサーとしての役目を果たそうということです。あなた方と手を組み、URESを打倒すれば、そうリナ・ジュミリンが再びURESの大統領となれます。あなたにだったら、この太陽系を任せれるような気がしましたので・・・」
「バランサーか・・・何か、エイレーネっていう恒星国家が、俺たちを見下してるような気がするな」

 話しを聞いていた、クラストが自分の思いをそのまま口に出した。シャアは、クラストの方をじっと見つめた。

「・・・クラスト・ミリング少尉ですね?」
「何故、俺の名前を?」
「太陽系にいて、ニュースを見ていれば、あなたの顔、そして名前くらい誰でも知っていると思いますがね?」

 クラストは、こんな石っころに囲まれて生活している人が、まさか自分の名前を知っているとは思わなかった。しかし、よくよく考えてみると、確かに自分は世間では、リナを誘拐したことになっている『有名人』であることを忘れていた。

「見下しているとおっっしゃいましたよね?少尉。私達は、ただこの人類発祥の地が破壊されていくのを、何もせず黙って見ている訳にはいかないのですよ。私達、カイネーンいえ、失礼エイレーネ人と呼んでくださっても結構ですが・・・私達は、5光年というとてつもない遠い所に住んでいるのです。私にとって、エイレーセ恒星系の第二惑星が私の故郷です。しかし、同時に地球、太陽系は私にとって第二の故郷でもあるのです」
「そんなのは・・・」

 クラストの言葉をとどめたのは、ドマスティー大統領の手であった。

(そうだった。俺たちには選択肢がないんだ。ここで、こいつ等と手を結ばなければ生きていけないんだった)

 ドマスティーは、横目でクラストが口を閉じたのを確認すると、シャアと今後どのような作戦を取るのか、デス・ロックスとティエラの関係、クルー全員の安全の保証など、細かい部分まで話し合った。


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