Ultimate Justice 第7話 〜赤い機体〜

3.solution

EP0044年4月17日 デス・ロックス アステロイドコロニー『エリュテーサン』

 クラストは、自分の茶色の髪を手でかきながら、急いでエリュテーサンの第10MSデッキへと向かった。朝早く、インターホンで呼び起こされたから、髪をセットする暇もなく寝癖を、無意識に直しながら向かっていた。

 通路から開けた場所に出た。そこには、100機以上のMSがずらりと勢揃いしていた。あのアステロイドベルトで、突然隕石からMSへと変化した機体もあったのが分かった。それらは、外惑星連邦にもURESにも、いや太陽系にすら存在しない、ヘンテコナなデザインだとクラストは思った。さすがに、数百年も太陽系から離れて暮らしていれば、こんなデザインも出来るのかなと自分を納得させた。
 そう考えているうちに、一人のメカニックマンがクラストに手招きをした。自分と同年代の若者だった。

「あなたが、クラスト少尉ですね?」
「ああ、そうだ」
「この機体、あなたのでしょう?」

 若者が指差した方向を見ると、この2週間で随分と親しく感じるようになった、赤い機体があった。

「ああ、俺のだ。いい機体だ」
「良い機体?冗談でしょう?」

 この若者の、言葉にムッとクラストはなったが、それを何とか表情に出さずに、自分の感情を抑えて「何故だ?」と聞き返した。

「だって、この機体は・・・デス・ロックスがニュータイプの反乱の時に外惑星連邦へ譲った3機の試作機の内の一つですよ?まさか、まだ残っていると思いませんでしたよ」
「そ、そうなのか?」
「ええ、50年ほど前の機体です。しかも、PAS、いえサイコミュ増幅システムが故障しているんですよ」
「だが、サイコミュ兵器・・・ファンネルは使えたぞ?」
 若者は、疑いの目でクラストを見た。
「いや、本当だ。戦闘記録のデータを見てくれれば分かるはずだ」

 若者は、クラストのその言葉を聞くと、持っていた情報端末を見せてくれた。そこには、確かにファンネルを使ったという記録が記されていた。

「もう、昨日戦闘記録は見ました。直接あなたに聞いてみたかったんです」
「そうか、それで?」
「あなたは、まれに見るニュータイプ能力保持者ですよ!」

 クラストは、若者の顔がぱぁっと明るくなったように感じた。そして、いきなり両手を握られ、上下に大きく振られた。

「でも、同じ2つの機体のパイロットも、ファンネルを使用できたぞ?」
「それは、当たり前ですよ!だって、その二機はサイコミュ増幅システムは正常に作動していたんですから!このサイコミュ増幅システムは、ニュータイプ能力がほとんどない人にだって、サイコミュ兵器を使用できるようになっているんでからね」
「・・・そうなのか?」
「あなたは、あの宇宙世紀のアムロ・レイやシャア・アズナブルのようになれるニュータイプ能力があるってことですよ?嬉しくないんですか?」

 そう若いメカニックマンが聞いたは、クラストが喜ぶ表情を見せなかったたからであった。

「・・・俺には、そんな天才的な能力があるのか?」
「そうですよ!クラスト少尉は、EP時代のアムロ・レイになれる素質があるんですよ!」
「この2週間で・・・親友を二人失った。二人とも、俺の目の前でだ。大切な人さえ守る事が出来ない・・・・・・そんな能力、くそ食らえだ!」

 若いメカニックマンは、クラストがMSデッキから出ていくのをただ茫然と見ていることしか出来なかった。


――その頃、アステロイド・ベルトには続々と、URES軍と外惑星連邦軍の戦力が集結し、両軍の間では睨み合いが続いていた。
 休戦協定によって生まれた「平和」は、1週間という短い命に終わりを告げようとしていた。

 どちらが先に攻撃をしたのかは、分からない。しかし、そんなことは、外惑星連邦、URES双方にとってどうでもよい事であった。何故なら、もう既に戦争が始まってしまっていたからだ。
 両軍合わせて、数百隻の艦艇が放つミサイル、メガ粒子の光がアステロイド・ベルトを昼間のようにしていた。目標に辿りつく前に、隕石に当たり火球になるミサイル。目標の対空砲で迎撃を受け、爆散するMS。まさに、戦場がそこにあった。

EP0044年4月18日、偽りの和平は、そのベールを脱ぎ、人は再び戦いを始めた。


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あとがき
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