Ultimate Justice 第8話 〜始まる時〜

2.Side Attack

EP0044年4月24日 アステロイド・コロニー『エリュテーサン』

「そちらのチェックは?何っ?終わった。よし、発進させろ!」
 エリューテサンのMSデッキでは、エアロックが解除される警告音が鳴り、警告灯がデッキ内を赤く染めていた。

「クラスト少尉!」

 改良された赤い機体へ向かおうとした時だった。自分が、シャア・アズナブルやアムロ・レイのようになれると言った、あのメカニック・マンの声だった。前会ったときは、胸のネームプレートがなく、彼の名前がわからずじまいだった。今日は、ネームプレートがちゃんと張ってあった。『ジョージ・アンドー』と書かれていた。

「アンドー君、何だ?」

 いきなり自分の名前を呼ばれて、ジョージは感動した。ジョージ・アンドーは、クラストのMS戦闘記録を見て以来、必ずクラストは大物になると思い込んでいる。その憧れの人物に名前を呼ばれたから、感動したのであった。しかし、何を伝えに来たのかを思いだし、その感動の波を押し止めた。一拍を置き、ジョージは喋り出した。

「クラスト少尉、実はこのガンダムには、バリアーがあるんですよ!」
「バリアー?」
「はい、正確にはミノフスキー・バリアーというものですけれど」
「聞いたことないな・・・」
「そうでしょう。だって、太陽系連邦時代に姿を消したテクロノジーですから」
「で、それが何だって言うんだ?ビームシールドがあるから、そんなもの要らないんじゃないのか?」
「ビームシールドより、遥かに強力な防御力があります。あと、サイコミュと連動しているので、ミノフスキー・バリアーは意識するだけで、オン、オフが出来ますから!」
「わかった、使ってみるよ」
 クラストは、自分の体をガンダムへの方へと流した。
「サイコミュ増幅装置が作動していますので、今まで以上の戦果期待していますよ!」
 両手を振っているジョージを見て、クラストは口元が緩んだ。

(純粋なヤツだな・・・)

 クラストは、ガンダムのコクピットへ入ると、中の空気というか、雰囲気が前乗ったときは全く違う事に気が付いた。ガンダムの手や身体が、あたかも自分の手や身体のように感じるのであった。

(これが、サイコミュ増幅装置が作動している状況か・・・)

 そう感心しながらも、自分の前に射出されていく機体に目をやった。それは、デス・ロックスが開発した機体であった。その機体を見た、ティエラ共和国のパイロットの多くが外見から「ボール」と呼んだ。その名の通り、球状の機体であり、モビルスーツというよりは、モビルアーマーと呼んだ方が正しいだろう。ボールと聞いた時、クラストは宇宙世紀の『ボール』を思い出したが、デス・ロックスの「ボール」は、キャノン砲も、マニュピレ―ターも付いていなかった。本当にボールという名がふさわしいと感じた。
 色んな事を考えていると、目の前のボールが、突然隕石へと変貌した。どのような技術がそれを可能としているかは、クラストの頭では理解できなかった。だが、太陽系には存在しないテクノロジーが、外惑星連邦の討伐隊を退く事を可能とさせただろうと推測できた。

「ガンダム、クラスト・ミリング出ます!」

 ガンダムは、両足を長距離用の通称「ゲタ」と呼ばれている機体に固定し、エリュテーサンを後にした。後続からも、同じようにゲタを履いたMSが、続々と出撃した。

 今回の作戦は、URESの主力艦隊への直接攻撃ではなく、主力艦隊をサポートする形で展開している、いわゆる「補給を主任務とする艦隊」への攻撃をターゲットとした作戦であった。その艦隊は、エリュテーサンから近い位置にいたが、ティエラ共和国の所有するMSが単独で辿りつける距離ではなかった。そこで、ティエラのMSはゲタをはくことになったのである。

 クラストの横に、MSの編隊が凄まじい速さで横切って行った。MSの小型化が進み、20メートル級のMSが常識である今だが、その機体には全くその常識が通用しておらず、ガンダムの約2倍の40メートルもの高さを持っていた。。また、ボールもそれほどまでではないが、ガンダムの1.5倍の大きさはあった。
 この40メートル級のMSを、デス・ロックスは「ノウヘッド」と呼んでいる。その名の通り、このMSには頭、ヘッドが存在しないにも関わらず、手足は存在している。何とも奇妙な化け物で、「妖怪」といった東洋的な言葉が一番当てはまる。

(どうやったら、本当にこんなデザイン思いつくんだ?)

 MS好きのクラストにとって、デス・ロックスのデザインセンスはあまり理解できなかった。ガンダムの両脇に、同じガンダムが並んだ。はっと、クラストは声をあげた。

「キールと・・・ジョイス?もう大丈夫なのか?」
「うん、もう大丈夫よ。迷惑かけちゃったみたいね」

 クラストは、ジョイスの声を聞くと、何故か心が落ち着くような感じがした。ジョイスが、少し照れた表情を見せているのが、ディスプレイから読み取れた。

「少佐が退院したかと思うと、今度はクラストが入院しちゃったんで、びっくりしましたよ!」
「キールにも心配かけたようだな。すまなかった」
「こうやって3人がまた揃う事が出来たから、本当に良かったよ!」
「ああ、そうだな」

(2人とも、絶対に死なせない)

 そうクラストは、心の中で誓った。この心の声を、キールとジョイスには、はっきりと聞こえたが、二人は何も言わず、クラストのその想いに感謝した。


3.suddenly
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