Ultimate Justice 第8話 〜始まる時〜

3.suddenly

EP0044年4月24日 アステロイド・ベルト ベータ地帯

「暇だな・・・」
 
 URES軍第23補給艦隊の司令官を務める、シュラビッツ・イコスキー少佐は、数時間前に主力艦隊へ数日分の補給物資を届けたのであった。それは、その届けた補給物資の量だけ、この宙域で暇だと言う事であった。

 第23補給艦隊は、5隻のUBCS巡洋艦と30隻の大型輸送船からなる艦隊である。アステロイド・ベルトで繰り広げられている最前線から、最も近い位置に展開しているURES補給艦隊であった。しかし、一番近いといっても、敵である外惑星連邦はアステロイド・ベルトを挟んだ反対側にいるので、索敵もパトロールもおろそかにしているのが現状である。それは、デス・ロックスとティエラにとって、好都合であったということは言うまでもない。

 デス・ロックス本拠地から発進した1機のボールが、速度を緩め前面のカバーを開いた。そこから折りたたみ式の、細長い物体はゆっくりと背伸びをしているような格好を見せ、前方に展開した。それは超長距離ビーム砲だった。
 そのビーム砲の先端に、光が収束されたかと思うと、太い線となったメガ粒子がURES艦隊目掛けて発射された。しかし、その線は分散し光の雨となって、補給艦隊を覆う。その一撃だけで、装甲の薄い輸送船の大半が大破し、UBCS巡洋艦も多大な損害を受けた。

  クラストは、その光景を目の当りにし、「ボール」と呼ばれているMAを、驚きのあまり口が開いたまま見つめていた。まさか、これほどまでの破壊力のある兵器が、球状の中に隠されているとは思いもしなかったからだ。

 ボールの長距離射撃から、すぐに3機のノウヘッドがすかさず、URES艦隊に襲いかかった。その巨大な両手には、ビームサーベルが抜かれていた。細長い光が、一瞬にして勢い良く伸び、ビームはノウヘッドの機体と同じ高さにまでになった。

 クラストに限らず、支援でかけつけたティエラ共和国のMS部隊は、何一つ支援らしい支援をする間もなく、4機のデス・ロックスのMSによって抵抗空しく、破壊されていくURES補給艦隊を見ているしかなかった。

(超長距離砲を持つ遠距離支援MAと、巨大ビームサーベルをを持つ接近戦用MSというわけか・・・)

 クラストは、何故かこのデス・ロックスの機体を分析しておかなければいけないという衝動に駆られ、この戦闘の全てのデータを記録させておいた。

(デス・ロックスが、敵にまわったら厄介だな)

 たったの十分で、4機のデス・ロックスの機体は任務を終えてしまった。URES補給艦隊の中に、何一つ戦闘可能な戦力は残っていなかった。

「あっ、脱出カプセルが!」

 一人のティエラパイロットが、そのカプセルを捕獲しようと動き出すと。その前に、巨大な影が壁となった。

「なっ、何を?」
『逃がしてやれ』
「そんな?我々がいることが知られてしまう可能性が・・・」
『その方が、デス・ロックスにとって好都合だ。彼等は、恐怖でこの地帯には侵入してこれないだろう。以上、帰還するぞ!』
「そうですが・・・」
『捕獲したければ、捕獲しろ。だが、帰り迷子になってもしらんぞ!』

 デス・ロックスのパイロットの言う通り、ティエラのパイロットは彼等の誘導なしでは、エリュテーサンに辿りつけるものは誰一人といないであろう。
 仕方なく、抗議の声を上げたティエラのパイロットも、巨大MSの後にぴったりとつき、帰還するしかなかった。

結局、クラスト、キール、ジョイスの3人も、1発も撃たずに帰還する事となった。クラストは、今回の戦闘はただティエラ共和国のパイロットに、デス・ロックスの力を見せつける為にわざわざ補給艦隊などを襲ったのでは?という疑問が湧き上がったが、それをあえて口に出そうとは思わなかった。


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