Ultimate Justice 第13話 〜衝突〜 |
2. Thunders EP0044年6月15日 月周回軌道上 第1防衛ライン 宇宙の星たちは、何百万年続けてきたように、今日も同じように輝いている。自ら光を生み出すことはない月も、太陽の光を浴び輝いていた。その星たちに混じり、数え切れないほどのモビルスーツと艦艇が展開していた。 ジェスIII、ジェスIV、ニノ、アドラーといった、各国のモビルスーツ、そして同じように艦艇が勢揃いしている。このような光景を、2ヶ月前の開戦当初誰が予想しただろうか。 リナ・ジュミリン暗殺未遂事件から始り、ティエラ共和国、ルナポリス連邦の解体、そしてURESと外惑星連邦との全面戦争。デス・ロックスとティエラと外惑星連邦による同盟。そして、デス・ロックスの反乱。 この僅か2ヶ月間の目まぐるしい情勢の変化で、どの国の兵士も、自分たちが何の目的のために戦っていたのか、困惑しているものも多くいた。スペースノイドを抹殺することを正義とした、アースノイド主義者たち。ニュータイプ国家の建設を目指し、アースノイドを駆逐するのを正義とした、ニュータイプ主義者たち。自分の国や家族を守る為に立ち上がったスペースノイドたち。今、月軌道上に集結した兵士達の主義、主張、そして唱える正義は違い、その違いが争いを太陽系全土まで広げる事となった。 しかし、「人類の故郷である地球を外敵から守る」という共通の目的を得た時、兵士たちは恐ろしいほどの結束力を見せたのであった。それには、各首脳たちも驚きを隠せずにいた。 同時刻 地球軌道上 軌道ステーション403『ジュダ』 総合司令部 「まもなく、72時間を経過します」 オペレーターが緊張した声で、後方に座る各首脳に伝えた。その声が、総合司令部全体に反響する中で、首脳たちが座る目の前の巨大スクリーンに突然あのエスティン・シャアの顔が現れた。 「太陽系の皆さん、お久しぶりです。私が送った文書は読んでいただけたでしょうか?」 爽やかな笑顔を見せながらも、その瞳には憎悪が渦巻いているように、リナには感じられた。 「もちろん、読ませていただいた。エスティン・シャア殿」 マックス・イナダが代表し立ち上がり、真直ぐスクリーンを見つめ答えた。 「そうですか。では、その返事を聞かせてもらいますかな?」 イナダは、笑みを浮かべ答えた「もちろん、ノーだ」と。シャアも、その答えを聞く前から予測していたのだろう、いささか驚いた様子を見せず、「そうですか」と言い残し短い沈黙の時が訪れた。 「では、地球の重力に引かれ続け、外へ飛べなくなってしまった旧人類を滅ぼしますか・・・」 そう言い残し、シャアの顔はスクリーン上から消え、スクリーンには元のように月軌道上の艦隊の最大望遠のライブ映像へとかわった。それから数秒後、オペレーターが緊迫した声を上げた。 「第1防衛線前方、距離28に空間の歪みを観測!恐らくデス・ロックスだと思われます」 「とうとう始ったか。太陽系、いや地球の存亡を賭けた戦いが!」 マックス・イナダは興奮した声を上げながら、スクリーンを食い入るように見つめていた。リナの目には、イナダがあたかもこの状況を喜んでいるかのうように映った。 「敵戦力の情報が入りました。艦艇数・・・えっ、45隻です。あと、モビルスーツも50機です」 オペレーターも自分で情報を読み上げながら、驚きを隠せなかった。何故なら、デス・ロックス本隊の戦力は、艦艇数だけでも2000隻はあるのではないかとまで予測されていたからである。 月軌道上 UBCS巡洋艦「イワナミ」 「よしっ!各艦、挨拶代わりに、宇宙人どもに核をくれてやれ!」 「イワナミ」の艦長であるキンブル・イナダは、度重なる命令違反、特にNBC兵器の無断使用により地球の基地へと左遷されていたが、皮肉にもNBC兵器の使用を躊躇わない人間だということで、特例で復帰を許されたのであった。 すぐ様、「イワナミ」から1発の核ミサイルが発射される。それを合図に、周囲に浮かぶ就航したばかりのUBCS巡洋艦からも、同じように次々と核ミサイルが発射されていく。これが、地球圏をかけた戦いの幕開けであった。 「やつら、驚くぞ・・・」 キンブルは不適な笑みを浮かべた。 核ミサイル発射に数秒遅れて、対艦ミサイルも外惑星連邦艦隊から発射される。 デス・ロックスの艦隊からは、ミサイルを迎撃する為にアンチ・ミサイル弾や、迎撃ミサイルが発射される。迎撃ミサイルが1基の核ミサイルを捉えようかと言う時に、迎撃ミサイルは爆発し、核ミサイルは何事もなかったかのうように、獲物に向かって突き進んでいく。それは、この1基の核ミサイルに限らず、放たれた数十発の核ミサイルの周辺も同じだった。 核ミサイルの周りには、1メートルほどの大きさの物体が付き添っていた。それは、外惑星連邦が保有する「プエンテ級駆逐艦」から放たれた、小型ファンネルであった。 プエンテ級駆逐艦には、100基近いファンネルが装備されており、それを操る為のコントロールセンターが中心部に設置されていた。そのコントロールセンターには、数十人の強化人間がヘルメットのようなものを被リ座っている。この駆逐艦自体が、大きな感応波増幅装置であり、遠距離のファンネルの操作を可能としていた。 デス・ロックス艦隊はミサイルが効かないと分かると、すぐに艦砲射撃をはじめ、丸いボールのような形のモビルアーマーも、同じように射撃を始めた。しかし、今度も放たれたビームの全てが核ミサイルに当たる直前に、何かの壁に弾かれたかのように、曲線を描き核ミサイルを通りすぎて行くだけだった。 「くくくっ!奴ら、今ごろ慌てふためいているな!まさか、Iフィールドがミサイルに搭載されていたとは夢にも思わなかっただろう!ハハハハッ!」 キンブルの笑い声が、「イワナミ」のブリッジを満たした。そして、ついに核ミサイルはその役目を遂げた。 眩いばかりの光が、地球圏に生まれた。この時、月は初めて表と裏側を同時に照らされた。いつもと同じように降り注ぐ太陽の光と、人間が作り出した悪魔の兵器による人工太陽の光によって・・・。 第14話へ |
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