Ultimate Justice 第14話 〜燃える宇宙〜
1. Burning “Sky”

EP0044年6月15日 月周回軌道上 第1防衛ライン

 核兵器の使用によって発生した光も消え、再び宇宙が暗闇に包まれた。デス・ロックス艦隊がいた場所には、ただ漆黒の宇宙空間が広がるだけであった。

 第1防衛ラインの前線司令部、月面恒久都市「ガリレオ」の司令室で皆が歓喜の声を上げた。一人を除いては。

 ヨシュア・ライネルは、モニターを注視していた。すると、再びデス・ロックス艦隊の艦影がわずかだが歪みながら現れた。司令室にいる軍人で、ヨシュア一人だけが、その微妙な空間の歪みに気が付いた。すぐ様、自らマイクを取り口を開いた。

「第1防衛ライン全艦隊に告ぐ!今の核兵器による攻撃は失敗だ!繰り返す、核兵器による攻撃は失敗。防衛態勢を維持したまま、周辺の索敵を怠るな!」

 このヨシュアの声は、地球周回軌道上ステーション「ジュダ」にある総合司令部にも届いた。

「何を言っているんだ?お前の息子は?」

 マックス・イナダは、ローセルト・ライネルを睨みつけ言い放った。しかし、言われたローセルト本人は、息子の判断が間違っていないことに確信をしていたので、あえてイナダには反論しなかった。ローセルトの沈黙の答えを助長するかのように、オペレーターが喋り出した。

「情報分析班の報告によりますと、先程のデス・ロックス艦隊の90パーセントは、卓越した光学技術による立体映像に間違いないそうです!」

 今度は、ローセルトが「ほら見ろ」といった表情でイナダを睨み返す。イナダは、額からにじみ出た汗を拭きながら、その視線をローセルトから巨大スクリーンへと移し、拳を肘掛に叩きつけた。


 次の瞬間、前線司令部と総合司令部、各艦隊、各MSのあらゆる索敵装置に、凄まじい数の反応が出現した。誰もが、その数に愕然とし、オペレーターも一時の間、声を出そうとしても出せなかった。

「・・・えっ!?第1防衛ライン前方に、約2000の艦艇出現を確認!」

「本当にこれ程までの戦力を保持していたのか・・・」

 シール・グリーン将軍も、この報告を聞き、やっと口に出来たのはそれだけだった。その横では、マックス・イナダが口をあんぐりと開け、茫然と立ちすくみ、刻々とリアルタイムで映し出される情報に圧倒されていた。

 そのような状況で、再び前線司令部にいるヨシュアの冷静な声が響いた。

「皆、落ちつけ。情報分析班に急いで、この映像を急いで分析しろと伝えろ!敵は、再び立体映像を使用し、我々を混乱させようとしている可能性がある!」

 グリーン将軍も、外惑星連邦の若造に負けていられるかと言わんばかりに、第1防衛ラインにいるURES艦隊に各自の判断で戦闘を行えという支持を出した。

 宇宙を何条もの光が横切る。デス・ロックス艦隊に向けて放たれた、URES艦隊と外惑星連邦艦隊による艦砲射撃である。宇宙に放たれた光の矢は、デス・ロックス艦艇に直撃したと思われたが、ほとんどが艦影を通り抜けて行くのが確認された。

「情報分析班から報告!現れた2000の艦艇の80パーセントが、光学技術による偽造艦だということが判明!」

「情報分析班、遅いぞ!」

 ヨシュアの激が飛び、自分が怒られたわけではないが、それでもオペレーターは一瞬肩をすくめた。一瞬遅れて、情報分析班の責任者が「はっ、申し訳ありません」と返答をした。


地球衛星軌道上 軌道ステーション「ジュダ」総合司令部

「やつらめ、我々をバカにしているのか!?」
 
 軌道ステーション「ジュダ」の総合司令部にいるイナダは、デス・ロックスの戦い方に憤りを感じていた。デス・ロックスは、まるで本気を出していない。再び、オペレーターの声が総合司令部に響く。

「敵MS部隊の出現を確認!・・・第1防衛ライン後方です!!」
「何故、今まで分からなかった!?空間転移反応はなかったはずだぞ?」
「はっ・・・はい。恐らく、何らかのステルス機能を搭載しているかと・・・」
「まぁいい!防衛ラインを崩されるな!」

 ローセルト・ライネルは、突き放すように言った。既に、第1防衛ラインの後方からは、突如現れたデス・ロックスのMS部隊からの艦砲射撃が始っており、急遽、方向転換中の外惑星連邦とURESの同盟軍艦艇に被害を及ぼし始めていた。

「ライネル大統領、海王星圏から緊急通信です!『現在、約500隻から構成されるデス・ロックス艦隊による奇襲を受け、守備隊が交戦中』だそうです」
「くっ、首都を狙うとは・・・」

 外惑星連邦の全戦力が、防衛ラインにいるといっても過言でない。首都防衛に残してきたのは、数隻の艦艇と数十機のMSでしかなく、守備隊が全滅するのは時間の問題だった。守備隊に最低限の戦力しか残さなかった理由は、デス・ロックスが必ず最初に地球を攻撃してくるという確信からのものであったが、見事にそれは覆されてしまったわけだ。

「これで、我々外惑星連邦人民は帰る場所を失ったというわけか・・・」

 ローセルト・ライネルはそう呟き、スクリーン上にあるデス・ロックス艦隊を睨みつけた。


 時が経つにつれ、第1防衛ラインの崩壊は避けられない状況になりつつあった。それは、突然防衛ラインの後方に現れたデス・ロックスMS部隊による所が大きい。超長距離砲撃を得意とする「ボール」型MA(モビルアーマー)と、格闘戦を得意とする「ノウヘッド」型巨大MSによって構成されたMS部隊は、次々と同盟軍のジェスIII、ジェスIVやアドラーといったMSを撃破していった。

 さすがに、デス・ロックスのMS部隊も、クローン強化人間による攻撃、そして、無人機による攻撃によって被害は受けていた。しかし、それは同盟軍のものと比べると、微々たるものであった。

 その中でも、唯一防衛線を維持していたのは、ティエラ共和国軍のソル級戦艦「ムンド」を中心とする西方防衛隊であった。

 3機の赤いガンダムと、白い3機のアドラーが、華麗な連携プレーで、巨大なビームソードを振りかざすノウヘッドを、適度な間合いを取りながら、ファンネルによるオールレンジ攻撃で追い詰めていく。ノウヘッドのパイロットは、その巨大な機体の機動力をフルに生かし、何とか避けるが、クラストが放ったビームライフルの一撃が決定打となり、そのノウヘッドから戦闘能力を奪い去った。

『クラスト、ナイスヒット!』

 オール・ビュー・モニターの一角にウィンドウが開き、そこには、ジョイス・ミラーがウィンクをしている顔が映った。それに、クラストは笑顔で返事をした。一瞬、心が緊張から解き放たれるが、戦場はそれが続くのを許さなかった。

 すぐに、ボールの超長距離ビーム砲が生み出した光条がクラスト機を襲う。間一髪でそれを避け、ビームが放たれた方向へ、すかさずビームライフルを射撃する。それに習うように、ジョイスとキールの乗る赤い機体、そして白い機体も、トリガーを引く。6機から放たれた光は、正確にボールを突き刺した。

 3機の白いアドラーを操るのは、クラスト直属の部下であるピエテロ、グレイ、ホセの3人であった。感情抑制装置を外され、人間らしさが最近現れるようになり、3人とも個性が出て来ていた。そのおかげなのか、同じタイプの強化人間以上に、そのパイロットとしての能力が上がっていた。
 
 彼ら6人によって、着実にデス・ロックスのMS部隊は減っていった。しかし、それ以上に同盟軍の被害は多く、1日も持たずに戦線は崩壊しつつあった。

2.war front
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