Ultimate Justice 第15話 〜光の雨〜
1.Meteor

EP0044年6月17日 月面都市「ガリレオ」 前線司令部

 アステロイド・コロニー「エリュテーサン」を護衛しながら進むデス・ロックス軍。このデス・ロックス軍の動きを分析し、その目的の意味を最初に悟ったのは、前線司令部のヨシュア・ライネルだった。

「全砲門、敵アステロイドに向けろ!」

 ヨシュアの命令に、前線司令部の兵士たちは戸惑いを見せるが、すぐにその言わんとすることを理解した。オペレーターは、青ざめた表情で、ヨシュアが発した命令を部隊に伝達する。

「総合司令部、こちらヨシュア・ライネルです」
『どうした?』

 応答したのは、父ローセルト・ライネルだった。

「デス・ロックスはエリュテーサンを月に落とす気です」
『何だと!?』
「エリュテーサンが、このまま進むとすれば・・・間違いなくガリレオに衝突します。至急、ウィアロンで砲撃して下さい。それまでは、こちらで何とかします」
『分かった』

 ヨシュアは、プライベート回線を切ると、月面に設置されているアミ――月面に衝突する可能性が高い小隕石を、事前に破壊する対隕石迎撃砲――の起動を催促した。アミ(Anti-Meteorite Interceptor)は、都市ごとに設置されているが、その威力は小規模な数十メートル規模の隕石を破壊するだけであって、まして数十キロにもなる隕石を破壊することは不可能だということは、誰が見ても明らかだった。

「アミ、発射準備整いました」

 非戦闘時であれば、巨大な隕石が落下する危険性があれば、専門の特殊部隊が隕石に取りつき爆破する。しかし、その部隊を今向かわせたとしても、隕石に取りつける可能性は万に一つであった。

「発射しろ」

 しかし、何もしないよりはアミを起動させ、少しでも隕石を破壊した方がいいとヨシュアは考えたのである。

「アミ発射!」

 月面都市「ガリレオ」郊外に設置されたアミから、時が経つにつれ巨大化していくアステロイド・コロニー「エリュテーサン」にビームが放たれるが、その射線にいたデス・ロックスの巨大MAを破壊したことにより、そのエネルギーの威力は失われ、エリュテーサンに着弾した時には、ビームライフル程度の威力しか持ち合わせていなかった。

「着弾、目標に変化なし。アミ、次の発射までに15分の充電が必要です」

 予想以上のアミの威力のなさに、ヨシュアは失望した。

(ウィアロンが、上手く狙撃してくれることを祈るしかないな)


同時刻 地球起動ステーション「ジュダ」 総合司令部


「何?ウィアロンが発射可能な状態になるまで数時間必要だと!?」

 「ジュダ」の一室で、ローセルト・ライネルは、目の前にいるサングラスの老人に激怒していた。それは、彼がウィアロンの発射には月にアステロイドが衝突する予定時間より、さらに60分後に可能となるとほざいたからだ。

 シール・グリーン将軍の目は、いつものようにサングラスに隠されたままで、ローセルト・ライネルは彼の考えが読み取れなかった。この男よりも、考えが読み取れるマックス・イナダの方が話しやすかったのだが、このような非常時に、イナダは体調不良で部屋で寝こんでいるという。

「では、ありったけの核兵器を打ち込めばいいであろう!」
「ライネル大統領。少し落ちついたらどうかね?今、残っている核兵器を仮にアステロイドに打ち込んでも、その中の何発が直撃すると思うのかね?」

 確かにグリーン将軍が語る事は正しかった。既に、デス・ロックスは今回の作戦の隠し玉であったIフィールド搭載型の核ミサイルの迎撃方法は知られてしまったからである。

「ご子息に、前線司令部から離れよと伝えてはどうですか?」
「バカを言え、前線司令部をやられれば第1防衛ラインは突破されたのと同じだぞ!」
「もう、第1防衛ラインは長くは持たないことは目に見えている」

 突如、グリーン将軍は強い口調へと変わった。

「将軍は、第1防衛ラインを捨てろと言うのか?」
「そうは言っていない。ただ、一時撤退し、態勢を整えるべきだと言っているのだ」
「しかし、外惑星圏を完全に失った今、月が主な補給基地なのだぞ?」
「そうだが、現在残っている戦力を失うのは、補給基地を失うよりも損害は大きい。月を失っても、我々には地球という補給基地があるではないか?」
「そうだが・・・」

「グリーン将軍」

 ノックもせずに1人の兵士が部屋へと入ってきた。すると、グリーン将軍に何かを耳打ちし、すぐに去っていった。何だ一体と憤りを感じたが、グリーン将軍の口から出た言葉によって、その憤りはどこかへ消えていった。

「ライネル大統領。よいニュースだ。ウィアロンの発射は何とかぎりぎり衝突前に可能になったそうだ。技術班に感謝するんだな」

 その言葉を聞き、ライネルは少しの間だが、ほっと胸を撫で下ろす事が出来た。しかし、その間にもアステロイド・コロニー「エリュテーサン」は月へ近付きつつあった。


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