Ultimate Justice 第15話 〜光の雨〜
3.impact

EP0044年6月17日 月面都市「ガリレオ」 前線司令部

 迫りくるアステロイド・コロニー「エリュテーサン」に直撃した巨大機動砲台「ウィアロン」の光の矢。その輝く眩いばかりの光は、前線司令部のスクリーンを見つめる多くの人にとって、まさしく「希望の光」だった。巨大なメガ粒子は、アステロイドの3分の1を文字通り消滅させ、残りは原形をとどめることが出来ず崩壊した。

 再び前線司令部は歓喜で満ちた。ある者はガッツポーズをし、ある者は抱き合い喜んだ。しかし、その歓喜も一瞬のことだった。落下コースを分析していた1人が、ヨシュアに語り掛ける声を聞いたからである。

「司令、崩壊した一部がここに落ちます」

 ヨシュアは、頷きすぐに非難命令を出そうと、手元にある情報端末を操作しようとするが、その人物が首を横に振り制した。

「おそらく破片同士が衝突して加速したのでしょう。衝突まで数分しかありません。今脱出しても、降り注ぐ隕石群にやられるだけです」

 そう言われたが、ヨシュアは構わず非難命令を出した。1人でも多く助かることが出来ればいい、そう願って。

 歓喜が一瞬にして、絶望に変わったのは前線司令部だけではなかった。戦況を監視していた、地球軌道ステーション「ジュダ」の総合司令部も、歓喜の声が上がったと思うと、次の瞬間には、何ともいえない気まずい沈黙が漂った。

 自分の息子の死を覚悟してか、ローセルト・ライネルは俯き、何やらぶつぶつと祈りのようなものを唱えている。その姿を、誰にも悟られず横目でグリーン将軍は見ていた。

(憐れなものだな。ニュータイプ国家と称しておきながら、我々の考えを読むことさえ出来ないとはな・・・)

「・・・勇気ある兵士達に、敬礼!」

 グリーン将軍は、悲痛な面持を装い言った。総合司令部にいる者は、全員無条件にその指示に従い、ガリレオの目前にまで迫っている隕石が映し出されているスクリーンに向かって敬礼をした。そのグリーン将軍の芝居に気付く者はおらず、その声に涙ぐむ者もいた。




 ヨシュア・ライネルは、最後まで残ると言い張った部下数名と共に、前線司令部に立ち考えていた。

(結局、脱出できたのは港にいた数百名か・・・。数日前に、市民を非難させて置いただけでも不幸中の幸いか・・・)

「約1分で、衝突します」

 オペレーターは、死の危険が迫っているのにも関わらず、相変わらず冷静な口調で報告する。

「F・テクノロジーの使用を認めた自分への、神からの罰かな・・・」

 「強化人間クローン化計画」を推し進めた父親は、それを実行に移す前に、まだ子供だった自分に一度だけ、「するべきか、しないべきか」と、ふと問いかけてきた事があった。その時、自分は「そんなことをしたら駄目だ」と幼いながらも分かっていた。でも、父親の機嫌を取る為に「するべき」と安易に答えてしまった。

 歴史に「もし」は存在しない。だが、もしあの時違う答えを言っていれば、外惑星連邦は、あのジョーイ・ジュミリンの和平交渉に応じ、再び太陽系連邦が復活していたかもしれない。そうなっていれば、このデス・ロックスに対抗する戦力を整える事も出来たはずだ。

「何気ない選択が、後で重大な結果を招くとはな・・・これが運命か・・・」

 その言葉を最後に、ヨシュア・ライネルは、月面都市「ガリレオ」と共に消滅した。

 「ガリレオ」消滅の報告を受け、第1防衛ラインに残っていた同盟軍の戦力は、一斉に撤退を始めた。また、「ガリレオ」を除く月面都市は、URESからの一方的な独立を宣言。そして、デス・ロックスに対して「無条件降伏」を提示した。これを止める術は、URESにも外惑星連邦にも残されていなかった。


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